ゲーマー薬剤師の日々雑感

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【医療】アルツハイマー型認知症の新薬「アデュカヌマブ」が米国FDAで条件付き承認へ!

昨日6月7日米国のFDA米食品医薬品局)がエーザイと米バイオジェンが共同開発を進めていた、アルツハイマー認知症治療薬「アデュカヌマブ」を条件付きで迅速承認したと発表しました。

これを受けて本日6月8日のエーザイの株はストップ高。売り手が少なく取引が成立しない状態になっていたと報道されています。

 

現在臨床の現場で用いられているアルツハイマー認知症の薬は主に足りなくなった神経伝達物質を増やし神経伝達を補助するものや、逆に過剰になった神経伝達が細胞を障害するのを抑えるものがあります。

病気の進行を遅らせたり、怒りっぽくなったり徘徊したりといった症状を抑える働きを持っていますが完全に認知症を止めれられはせず、薬を服用していたとしても数年単位で病状は悪化していきます。

 

今回話題になっている「アデュカヌマブ」ですがこれまでのアルツハイマー認知症治療薬とは全く異なります。

この薬剤は抗体製剤です。昨今の新型コロナウィルスをめぐる報道の中でも耳にするかもしれませんが、抗体は特定のターゲット(抗原)と結合し異物として体内から除去する役割を持っています。我々の体の中に侵入してきた細菌やウィルスをやっつける際も抗体が働いています。

ではこの薬におけるターゲットとは何か。それはアミロイドβと呼ばれるタンパク質です。このアミロイドβは簡単に言えば脳内のゴミです。このゴミが認知症を発症する数十年前からちょっとずつたまっていき、それにより脳細胞が障害され、認知症に至ると考えられています。

ではこのゴミであるアミロイドβを取り除きましょう!というのが「アデュカヌマブ」の薬効になります。

こう聞くと画期的思えますが(実際これまでの薬からしたら画期的です)残念ながらすでに障害されている脳神経細胞アミロイドβを取り除いても元に戻すのは難しいと考えられており、「軽度認知症」の患者さんが対象となります。

またこれまでの認知症の薬は飲み薬や貼り薬なのに対し、「アデュカヌマブ」は点滴で投与する薬剤です。治験では月1回の投与で効果が見られたとのことですのでそのくらいのペースで忘れず受診する必要があることが予想されます。薬自体の値段もそれなりに高価になることが予想されます。

 

認知症とそれらを取り巻く医療、介護の問題は本当に深刻なものです。僕も暴れてスタッフに攻撃する患者さんや、介護で疲れ切ったご家族を何度も見聞きしたことがあります。条件付き申請ということで今後の臨床データ次第では取り消される可能性もあるわけですが、この新たな治療薬の活躍に期待したいです。